テレビ朝日は、エンターテインメント領域に特化したweb3ハッカソン「WEB3 x Entertainment Creative Hackthon/Ideathon」を開催する。2023年3月25日のキックオフイベントでテーマなどの詳細を発表する。web3に関心を持つエンジニアやクリエイターであれば誰でもエントリーが可能だ。近ごろは、大手企業が主催するweb3のハッカソンが数多く開催されているが、エンターテインメントに特化したものはまだ珍しい。狙いを探った。

 ハッカソンは簡単に言うとプログラミングやグラフィックデザインなどの開発コンテストだ。テレビ朝日が主催する「WEB3 x Entertainment Creative Hackthon/Ideathon」では、プロダクトやビジネスアイデアなどを募る。しかも、エンターテインメント領域に特化しているのが特徴だ。3月25日にキックオフイベントを開催し、web3に関心のあるエンジニアやクリエイターのエントリーを広く募集するという。今回は ゲーム、音楽、NFT(非代替性トークン)、そしてDAO&Community(DAO:自律分散型組織)の4つの分野にテーマを絞った。コンサルティング大手のアクセンチュアやモバイルゲームを提供するサイバード(東京・渋谷)、テレビ朝日系列の音楽出版社であるテレビ朝日ミュージックなどがスポンサーとなって進める。

 「スポンサーごとにテーマを決め、受賞者を決める形式になる」と語るのはテレビ朝日 ビジネスソリューション本部 インターネット・オブ・テレビジョン局インターネット・オブ・テレビジョンセンターの増澤晃氏。23年4月22日に開催される「DEMODAY」で、予選通過者がプレゼンし、その中から受賞者が決定する。賞金総額は250万円以上になる見込みだ。

テレビ朝日 ビジネスソリューション本部 インターネット・オブ・テレビジョン局インターネット・オブ・テレビジョンセンターの増澤晃氏
テレビ朝日 ビジネスソリューション本部 インターネット・オブ・テレビジョン局インターネット・オブ・テレビジョンセンターの増澤晃氏

 今回、ハッカソンのプラットフォームには、trevary(東京・目黒)が提供する「AKINDO」を採用する。AKINDOはこうしたweb3ハッカソンの開催実績を多く持っており、22年秋に開催した「東京web3ハッカソン」では、事前勉強会を含め700人の参加者を集め、98件ものプロダクトがエントリーされるなど、大きな成果を残した。trevary代表取締役の金城辰一郎氏は「想定していた規模の2倍以上の参加者とエントリー数だった」と振り返る。

 テレビ朝日は、23年2月に開催された、日本発のブロックチェーン「ASTAR(アスター)」と暗号資産決済システム「Slash(スラッシュ)」が主催したハッカソンにも共催として参加した。「テレビ朝日としても、賞金30万円の賞を提供したが、期待以上のプロダクトが数多くあって非常に驚いた」と語るのはテレビ朝日メディアプレックス デジタルマーケティング事業本部 ビジネスプロデュースディビジョン マネージャーの遠藤亮治氏だ。ハッカソンで出てくるアイデアには、専門的なプロダクトや投機的なサービスが多いだろうと想定していたが実際は違った。すぐにでも一般の人に受け入れられるようなアイデアが多かった。「参加者のweb3の未来を信じる熱量の高さがとても印象的だった」(遠藤氏)と話す。この共催での大きな手応えがハッカソンの主催につながった。

テレビ朝日メディアプレックス デジタルマーケティング事業本部 ビジネスプロデュースディビジョン マネージャーの遠藤亮治氏
テレビ朝日メディアプレックス デジタルマーケティング事業本部 ビジネスプロデュースディビジョン マネージャーの遠藤亮治氏

web3で体験を拡張できるアイデアに期待

 今回のハッカソンの一番の目的は、「エンジニアとクリエイターの共創の場を提供すること」(増澤氏)。そのためアイデアの所有権は、エントリーした本人のものとする。受賞した後に、今後どのように進めていくかは、それぞれのスポンサーと相談しながら決めるという。

 できるだけ広く、多くの参加者を集めるためパートナー企業とも協力してハッカソを進める。クリエイターに参加を呼びかける「クリエイター参加支援パートナー」として、イラストレーターなどのクリエイターが所属するNOKID(東京・渋谷)や、次世代クリエイターレーベル「cryptex (クリプテックス)」を運営するweb3進出支援のSHINSEKAI Technologies(東京・渋谷)などが名を連ねる。エンジニアの開発を支援するパートナーも公表しており、「初心者のエンジニアにも参加してもらいたい」(増澤氏)と言う。

 米国の暗号資産大手交換業社の破綻などもあり、web3関連への熱量が下がっているともいわれる。しかし、金城氏は、23年こそweb3のマスアダプション(一般大衆による受け入れ)が見込めると語る。「今までは、web3は一部のテック系のエンジニアのものと捉えられがちだったが、こうしたエンターテインメント領域で、一般の人にも広げていくための取り組みが国内外問わず出始めている。今回のハッカソンもそうした文脈にフィットしたものになるだろう」

web3ハッカソンのプラットフォーム「AKINDO」を提供するtrevary代表取締役の金城辰一郎氏
web3ハッカソンのプラットフォーム「AKINDO」を提供するtrevary代表取締役の金城辰一郎氏

 テレビ朝日が期待しているのは「体験を拡張できるアイデア」(増澤氏)。現在のように、テレビ業界が発展したのは、放送技術を発達させてきたエンジニアや、多くの人が楽しめる番組を制作してきたクリエイターの活躍があってこそだった。ハッカソンの主催も、web3でテレビ業界ができることは何かを模索するためでもある。「web3だからこそ生まれる共創の場を提供することで、存在感を示していきたい」という増澤氏。「個人的には、音楽やスポーツなどのイベントをもっと豊かにするような発想に期待している。ファンクラブの考え方を拡張するような面白いアイデアも出てきてほしい」と話す。3月25日のイベントは、オンラインでも配信される。

「ぜひ、応募してほしい」と3人
「ぜひ、応募してください!」と3人
▼関連リンク(クリックで別サイトへ) 「WEB3 x Entertainment Creative Hackthon/Ideathon」

(写真/吾妻拓)

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